第一話 すぐに See you, soon.



 義里カズ



     ◇述懐 1


 この部屋を気に入ったのは、大きな窓と、その手前にある段差を見た瞬間だった。

 まるで作業台のように、腰の高さに作られた段。

 これはいい。

 テーブルのように使えるし、座ったまま景色を毎日眺められる。端には植物を飾り、お気に入りの目覚まし時計や鉛筆立てを置こう。せっかくの一人暮らしだ、自分だけの城を作りたい。そんな風に思い、このアパートに即決したのだった。

 そこから一年。窓の前の段差は、本やら生活用品やらによって埋まった。冬対策にこたつを買ったのが決定的で、テーブルとしての価値は皆無。結局それから段差の上の物は片付けたけれど、別の使い道は思いつかない。最近では、窓を開けたりカーテンを操作したりするために手を伸ばす必要があり、手前の段差が邪魔にすら感じるようになった。だいたいそんなものだ。

 そして、今。片付いた段差の上には、拾ってきた女の子が寝転んでいる。


     ◇ 四月 1


 目覚まし時計を止める役目は私とシーユーの競争になる。今日は私が勝った。

 毛布の位置を直してから、窓のほうを見やる。段差で眠る彼女の方を。

 少女の身体を包む黄色の毛布。そこからはみ出す黒髪と白色の靴下。彼女は寝るときに靴下を履く癖がある。今日は目覚まし時計の音にも体が反応しなかったとみえて、ぴくりとも動かない。ゆっくりと毛布が上下して、彼女の呼吸を可視化している。

 今日は時間がある。近づいて、彼女の寝顔を覗き込んでみた。

 幼い、と思う。顔のパーツがみんな小さくて、それでいて輪郭もすっきりしているから、赤ちゃんにすら見える。前髪が重力に従って流れる。

 唇の薄い朱色がもどかしげに動く。少なくとも出会ったときよりは顔色がよくなったように見える。

 と、その双眸が僅かに開いた。まだ眠たげな瞳。

「……ごめんなさい、お母さん……」開口一番、シーユーは謝る。

「え?」

「……ん……」彼女は呻くように右手を出して顔を拭う。目をこすってから私のほうを見た。「……エリーだ。あれ、目覚まし鳴った?」

 やはり目覚まし時計の音に気づいてなかったらしい。珍しいことだ。「鳴ったよ。時間あるからもう少し寝てていいけど」

「起きる……起きるよ……」そう言いつつ毛布の中でもがく。長い黒髪がそれに合わせて動いた。

 私は着替えようと移動しながら、彼女の謝罪の意味を考える。私のことを母親と見間違えたのか、それとも、あれが彼女の口癖だったのか。訊く勇気はなかった。



 高校二年の春といっても、感慨はまったくない。

 入学と同時に越してきてから一年とちょっと。一人暮らしに慣れるまでは忙しかったけど、生活のあれこれが揃ってからは煩わしさも消えた。

 高校というのはイベント続きだ。生徒が暇にならないよう様々な予定を組んである。私たちはそれをただこなせばいい。

 友達も、繋がりも多くはいらない。私がこの高校を選んだ時のそんな覚悟。今でも間違っていないと思う。本当は友人など一人もいらなかったのだけど、シーユーとの出会いによって、また違った生活になったことは間違いない。

 春休みは特に予定はなかった。せいぜいバイトという名の手伝いくらいで、それも週に二回ほど。

 しかしながら、今日はやることがある。

「ほら行くよ」

「やだ。外、外やだ」シーユーが駄々をこねる。頭を振り回し、髪がモップのように揺れる。

 そろそろ美容室に連れて行かなければいけないのだ。考えてみれば、出会って以来彼女の髪は伸び続けていて、今では肩甲骨にかかるほどになっている。冬の時期は短くなくても許していたが、さすがにこれからはそうもいかない。

 しかしシーユーは外に出るのを嫌がる。一緒に暮らし始めてからはずっとそうだ。よほど必要な時くらいにしか外出する気はない。

 数少ないシーユーの私物、黄色い上着を私は押し付ける。

「さすがにこの髪はダメ。こんなに伸びたんだから、切らないとお風呂も面倒でしょ」

「やだ」

「じゃあどうするの。このままずっと伸ばす気?」

「外に誰もいないなら床屋さん行く。見てきて。シーユーは窓から見てるから」

 こんな調子で朝からちっとも動かない。私はそろそろ参ってきた。これでは母と子の言い争いだ。あまりこういうことが好きとはいえない。

 仕方ない、別の機会にするか。と思ったところで、シーユーが飛ぶように段差を降り、こちらへと距離をつめてくる。「そうだ! エリーがすればいいよ!」

「……え?」私は聞き返す。

「エリーの床屋さん。それならシーユーも外に出なくていいし、好きな風に切ってもらえる」

 ん、ちょっと分からない。五秒ほど考えて、やっとその意味を理解した。

「……私が髪切れってこと? ハサミで」

「そう!」

「素人だけど。やったこともないし、すかしバサミもない」

 私は自分で髪を切ったことがない。昔に前髪を整えようとしたら横一直線になって恥ずかしい姿になったことがあり、それ以来美容室に頼りっきりだ。

 それに道具が足りない。櫛や鏡はあるとしても、髪切り用のハサミは身だしなみ用の一本だけ。カットクロスの代わりになるものも思いつかない。切った髪を除けるマントのようなものはやはり必要だろう。

 土台無茶な話だと思う。しかしシーユーは名案を思いついたような笑顔で私にじゃれついてきた。このまま押し切られそうな感じがする。

 のしかかられたままサイドテーブルの財布に手を伸ばす。一応検討。お金は……ある。カットクロスは引越しの時に使った布団包みの布を利用すればいい。

 眉間に皺を寄せていたであろう私を、シーユーが抱きついたまま見上げてくる。ここまでのスキンシップは珍しい。

「……」

「なに」

「これからも洗濯のお手伝いします。贅沢なんていいません。片付けもすぐやります。だから、だから」

「あー、もう! ほんとそれやめて! 分かったから……」耐えかねて私はシーユーの頭を撫でる。「どんな髪形になっても後悔しない? 泣いたりしない?」

「だいじょぶ。エリーが切るんだもん」

 まったく、調子がいい。

 ちなみに彼女の手伝い云々の言葉は決して私が言わせているのではなく、元々の口癖らしい。出会った時からそうだった。連呼する彼女はいつも機械的な口調で、なんだか不気味。よって私はいつもそれを遮る。そのせいでたまに願いを押し切られるときがあるけれど、シーユーの縋るような顔を見るよりはずっといい。

 髪、か。とりあえずハサミを買ってくるところからはじめないといけない。



 四月になったがわずかに寒い。上着の前を閉めて出かける。

 シーユーがいるが一応ドアをダブルロックし、廊下を通りエレベーターへ。新居探しでわざわざ五階の部屋を選んでしまったことには後悔しかない。新生活の準備をする時は特に大変で、兄を連れてこなければ新たに家具を買うこともままならなかっただろう。引越しの時は最低限のものしか頼まなかった。

 エレベーターに乗り込み、階表示を見上げる。数字が減っていき、一階に着くとインターホンのような音が鳴る。

 エントランスはオートロックなものの、既存のアパートの入口に追加したらしくけっこう華奢。引越しの時なんか、大家さんが「出入りが面倒だろう」と一時的に開放してもらった。それくらいセキュリティ上は微妙。シーユーの例もあるし防犯には気をつけないといけない。

 と、さっそく怪しい人が壁の陰にいた。白髪の生えた、あまり背の大きくない老人。灰色のスーツは学生アパートにおいてけっこう目立つ。辺りを見回しながら壁伝いを進んでくる。

 私に気づいたところでその人は顔を固くし、話しかけてきた。「あ、どもすみません、このあたりで女の子を見かけませんでしたかね。そちら様より少し小さいくらいなんですが……」

「……」不審者に対して下手な情報を与えてはならない。

「あ、いえ、勧誘などではないんですがね。なにぶん身内ごとでしてあまり公にしたくないんですが、家出したらしいんですね。これくらいの背をした女の子です。このあたりでいたらしいという話を聞いたんで。この辺にお住みですかね?」

「……いえ」

「ああそうでしたか。とりあえずしばらくこの辺まわると思うんで、もし見かけたらおっしゃっていただけると。警察でもいいですし。家出っ子なんで」

「はあ」

 私の返事を待たず、その老人は私のアパートのエントランスの方へ向かう。オートロックのドアの不動っぷりに気づいたのか、向こうにある水路沿いの方へと歩いていった。あっちにある別のアパートもまわるのだろう。

 これくらいの背をした女の子、ねえ。



 下調べはしてあったけれど、意外と散髪用のハサミは売っていないものだった。

 最初にホームセンターへ行ったのがまずかったらしい。店舗が小さく、置いてあるハサミはほとんど工具か文房具だった。次のドラッグストアでは専用の櫛が見つかった。そうか、こういうのも必要だ。使ったことがないので思いつかなかった。三軒目となる古びた百貨店ではそれらしいコーナーがあり、揃えることができた。

 考えてみれば、これほど本腰を入れて準備しなくてもいい気がする。今回は揃える程度に切って、来月あたりどうにかシーユーを美容室に連れて行くことに成功すればいいのだ。それができれば、の話だけれど。

 そうして帰り、ノックしてから玄関を開けると、シーユーが部屋の奥から首を曲げ私を見てきた。

「お帰り、エリー」

 実は彼女と私の中で、合言葉代わりのノックを決めている。

 トトン、トン。

 このリズムを玄関で叩くことで帰りを知らせるのだ。セキュリティとしては甘いかもしれないけれど、あのオートロックシステムでは微妙なので念のための措置。それにシーユーが外に出るときはまず私と一緒だし、むしろこれは彼女を安心させるためのものだといえる。

 相変わらずシーユーは窓の手前がお気に入りのポジションらしい。毛布を畳み、段差の上に座りながら私が前に買った15パズルを解こうと試行錯誤している。

 シーユーに向かい、買って来たはさみと模造紙その他諸々を見せた。

「あ! 買ってきたんだ」

「そのために外に出たの。さ、明るいうちにやるよ」

「準備けっこうかかるのね……」

 テーブルを避け、ダンボールを椅子代わりにしてシーユーを座らせ、布をカットクロスにして洗濯ばさみで留める。目の前には姿見を置いた。シャンプーハットをカットクロス代わりにする方法もあるらしいけれどさすがにそこまでは面倒。髪長いし。あと、一人暮らしの私は新聞を取っていないので模造紙をわざわざ買って来た。

 一応釘を刺しておく。「動いちゃだめだから。怪我しちゃうよ」

「だいじょぶ。エリーはそういうことしない」

 シーユーはじっとしたままだった。言葉はわがままでも、行動は少し不安になるほど従順なのが彼女である。

 私といえば、ノートPCに映る『髪を切る方法』のマニュアルとにらめっこだった。「さて……どう切るかな」

 動かない彼女の背。なんだか出会った時と同じだと、気づいた。


     ◇二月 1


 玄関に女の子が縋りついていた。

 牡丹雪が降る日だったと記憶している。学校が終わっても雪が止まず、雪の勢いが弱まるまで図書館で粘り、スーパーによって夕食の材料を買ってから、そんな状況に出会ったのだった。

 私の部屋の前に、女の子がひとり。少し落ち着いた黄色のコート、垂れ落ちる黒髪、ドアに伸ばした青白い手。美術の資料集に載っていたフェルメールの「窓辺で手紙を読む女」を思い出させるような俯いた格好。

 その子が手を上に動かし、ドアをなぞる。手を丸めて、静かにノックする。誰かいるのか確かめるように。

 私の方はといえば、右手に傘とカバン、左手にビニール袋を持ったまま、声をかけられずにいた。

 オートロックなのにもかかわらずその子は建物の中に入り込んでおり、怪しさ満点だったのは間違いない。でも、髪の間から見える表情が寂しげで、声をかけるのすら躊躇われた。あるいは、私が持っていた寂しさと反発し合っていたのかもしれない。

 ノックを二度ずつ。返事はない。当たり前だ、そこは私の部屋なのだから。

「ねえ」結局、声をかけたのは私の方からだった。

 女の子は肩を大きく揺らした後、こちらを見る。姿を認識するように、僅かに目を細めた。その子の顔はあまりに幼くて、先ほどの悲壮感とは相反しているように思える。

 女の子が口を開いた。「……ここ、開かないの。家なのに。やっと見つけたのに」

「え?」

 どういう意味か分からなかった。やっと見つけたとは、どういうことか。

 とりあえず私のほうから近づく。落ち着いたはずの雪が、再び舞い始めている。その子はこちらを見ながら、扉を静かに叩き続ける。

「えっと、そこ、私の部屋」

 私がそう言うとその子は目を見開いた。「……そうなの?」

「うん」

 二月の外は寒い。言うことが見つからなくて、とりあえず提案する。震えるその子は子猫のように無害だと思えた。

「なか、入る? 鍵、あるけど」

 鍵があるなんて当たり前のことなのに、つい付け加えてしまった。

 女の子が遠慮がちに頷くのを見て、私はバッグを横に置く。鍵を開けるために。


     ◇四月 2


 あの時のように、私はシーユーを横から眺めている。肩にかかるあたりまで届くような髪。せいぜいセミロングだったあの頃から二ヶ月、伸びはかなり早いらしい。

 どう切ればいいか検討すべく、いろいろな角度から眺める。シーユーは布を着たまま部屋の中央に座りじっとしつつ、こちらをたまに見ては悪戯っぽく唇で笑う。

 昔の経験から分かっている。ただハサミを横に入れただけでは真一文字で味気ない髪型になってしまうのだ。インターネットで一応調べた切り方でなんとかするしかない。出会った時の髪形を理想としよう。

 霧吹きで軽く濡らし、櫛を通していく。シーユーは日頃から髪を梳くことをしない。アイロンをたまにかけているけど、髪が長いと癖が目立つようになる。

 カチューシャや髪留めである程度分けると切りやすくなるらしい。三段に分けてみた。

 後ろに回り、彼女に訊いてみる。

「二月の頃の長さまで切ればいい?」

「エリーにおまかせです」ふざけるように口調を変えるシーユー。「素敵にしてください」

「そんなこと言われても……」

 素敵どころか悲惨なことになる確率のほうが大きい。切りすぎてしまったらまずいので短くするつもりはないけど。

 ……さて、どこから切ろうか。

 まずは目立つ後ろ髪。首のした辺りに櫛を入れ、親指と人差し指で挟む。

 長さの不揃いな部分にすかしハサミを入れる。最初の一瞬は少し緊張した。金属の擦れる音とともに、九十九本の髪が模造紙へと落ちていく。何度か繰り返すとやがて毛の先が揃い始める。

 また別のを掴んで、同じ動作を繰り返す。最初は慣れなかったけれど、だんだん早く揃えられるようになってきた。

 一旦髪を整えなおして、シーユーの顔を覗き込む。

「時間かかるかもしれないからね」

「ん」目だけでこちらを見て微笑むシーユー。「だいじょぶ」

「テレビでも見てる? 向き変えようか」

 部屋の端にあるテレビを移動させることはできないが、シーユーの座る向きを変えればいい。

 彼女は軽く目を瞑る。

「今の時間、気になるテレビないからいらない。鏡見れなくなるし」

 それもそうか。

 しかし、いちいち髪型を確かめながら切るのはかなりの長期戦になりそう。飽きて寝られても困る。

 美容室の雰囲気を思い出し、なにかシーユーに話をふることにした。

「今日起きなかったね。夜更かしでもしてた?」

「んー」彼女は鏡の向こうで目を瞑る。「してない。なんだか夢みちゃって」

「なんの夢?」

「んー……」

 唸ったまま瞼を閉じている彼女を見ながら、朝の出来事を思い出す。

   ごめんなさい、お母さん。

 訊いてはいけないと思いつつも、いつの間にか私は口に出している。

「夢って、お母さんのこと?」

 その瞬間、シーユーの眉が動いたのを私は見逃さない。正解。

 目の前の少女は、いつまで経っても自らの母親について語ることはない。出会った日が唯一の例外で、それ以来私は訊くことをやめている。訊くたび彼女の目が暗く変わるのが嫌で仕方なかったのだ。

 いつまでも返事をしない彼女。

 過去に何があったのかは知らない。今シーユーの母親が何をしているのかも、シーユーがここに隠れ続ける理由も、なぜ親が探しに来ないのかも、私にはまったく理解できない。

 問い詰めても仕方がない。別の話題にしよう。そういえば。

「ねえ、こんな男の人、知ってたりしない?」

 出かけるときに出会った初老の男性の特徴をシーユーに伝える。家出少女を捜している、不審人物。

 そしてこの部屋には、住所不定の少女がいる。

「しらない」シーユーは目をつむり、開ける。

「窓から見てなかった?」

「見てない。うとうとしてた」

 そういえば今日はシーユーが窓から見下ろしていなかった。私が学校に行く時はたいてい窓から見送りをしてくれるので、裏の道路を通る時はつい癖で見上げてしまうのだ。

 後ろ髪はある程度すかすことができたので、横に移動する。耳のあたりを切るのが難しい。

「ちょっと左向いて」

「はーい」

 鏡を移動させるよりは頭の向きを指示したほうが楽。なんだか本物の美容師のようで面白い。

 左右をある程度切ったものの、鏡で見るとバランスがとれているかどうかは微妙に思える。やはり美容室にそのうち連れて行こう。

 そして前髪。シーユーの前に移動して、おでこの上の髪をつまむ。彼女は楽しむようにはにかんでいる。

 切る長さを目算しながら思う。

 シーユーと冬に初めて話した時も、だいたいこれくらいの距離だった、と。


    ◇二月 2


 ココアは万能だ。さっと出せる。

 来客用に買っておいたマグカップに粉末を入れ、ケトルで沸かしたお湯を加える。牛乳を温めている時間的余裕がないほど、その少女は寒さで震えていたのだった。

 電気ストーブの前に座るその子の背中を見ていると、本当に部屋へ招き入れてよかったのか不安になり始める。悪いことをするような子には見えないけど、それ自体が油断だとも思えた。

 雪を拭くように、タオルも貸した。近づいてみるとやっと分かる。髪は少し乱れ、汚れていた。その子はタオルを頭にかぶり、何度もかき回す。

 身長は私よりほんの少し小さいくらいで、仕草も少女のそれだ。じっと床を見るその瞳の色はほんの少し赤みがかった黒。

 ストーブとココアで落ち着いたのを見計らって、そばに座り質問を投げかける。

「えっと、どこかの部屋の子? 鍵なくしちゃったとか」

 私が最初に思いついたのはそれだった。この子がどこかの部屋の住人であるなら、外で震えていたのも分からなくもない。ドアが開かなかったから別の部屋に助けを求めた、という。

 女の子が私のほうを見る。観察されているようだ。

「ちがう」やがて首を振りながらその子は口を開く。「……今、ここにはあなたがいるの?」

 一瞬、訊かれている意味を考えた。

「……私? そうだけど。一年前から借りてる」

 答えると女の子は目を落とし、フローリングを指差す。「まえ、お母さんとここにいたの」

 やっと言いたい事が分かった。

「もしかして、昔ここに住んでいたってこと?」

 頷く女の子。

 この部屋の前の住人、ということか。なら鍵を持っていない理由も分かる。

 私はストーブの温度を調節しながら質問を続ける。

「じゃあ、そのお母さんは?」

「……」

 そこまで淡々と受け答えしていたその子の目に一滴の涙が浮かび、結露のように落ちていく。

 その様子を見て私は固まってしまった。なにせ女の子の顔つきはまったく変わらないまま、イレギュラーのように涙だけが流れているのだから。こっちを見上げたままのその子は、こちらから目を離さない。

「……もう会えない。たぶん。だから……」

 言いよどんだ唇に、涙が流れてゆく。動かぬ彫刻に伝う雨。でもその彫刻は私の前で生きているのだ。その異質さに追いつけない。

 詳しい経緯を話す気は、ないのだろう。たぶんこの表情は拒絶だ。

 私は女の子との距離を感じた。埋め方も思いつかず、ココアのおかわりを作りに台所へと逃げる。


     ◇四月 3


 お風呂場を覗いてみる。髪の片づけを考えるとお風呂場でやってもよかったな、といまさらながらに思う。

「髪洗った?」

「んー」

 シーユーは狭いバスタブに入ったままこっちを見て軽く笑う。私は扉を持ったまま、彼女の新たな髪形を確認する。

「……バランス悪いね」

 率直にそう思った。切っている時は全体的なバランスを意識していたはずなのに、こうしてみるとやはり不完全な印象を受ける。乾かしてからもう一度見る必要があるだろう。

 でもとりあえず、散髪は完了ということで。

「来月は美容室行くからね」湯に浸かっている彼女へと釘を刺す。

「えー、またエリーに切ってもらうよ」

「そんなこと言って、次はもっとひどい髪型になるかもしれないからね」

 大抵こんな冗談はちっとも効かなくて、案の定シーユーはにこにことしている。縁にかかっている彼女の手を意識し、私は扉を閉める。「切った髪の毛とか捨ててくる。あがったらちゃんとドライヤー使うこと」

「はーい」

 彼女の声が反響するのを聞きながら、私は片づけに取り掛かる。



 髪の処理が、思ったよりも面倒。

 細かいのが布に刺さっていたり、床にはみ出したり。とりあえずできるだけをまとめ、模造紙に乗せ丸める。ハサミや櫛を洗い、鏡と椅子を片付けてからゴミ出しに出る。

 ゴミ捨て場は裏手にある。扉にはダイヤル式の鍵がついていてこのアパートの住人以外は使えないようになっているのだ。一人暮らしになって面倒に思うことの一つがこのゴミ出し。実家で親に任せきっていたことを思い知らされる。

 声をかけられた。

「えっと、絵里ちゃんだっけ」

 眠たげな目にかかる、ウエーブをかけた茶色の髪。ぼさっとした印象は出会った時から記憶に残っている。「塩川さん」

「お、覚えてくれてるね」

 二つ隣の部屋だし、何度か顔を合わせているのだから当然だ。名字しか知らないけど。

 私が入居する前からいたわけで、その飄々とした立ち方からしても年上であることは間違いない。でも同じ学校にいるわけじゃなく、何をしている人なのかはさっぱりだ。パーカー姿しか見たことがない。

「ゴミ捨てるんでしょ? どうぞ」

「すみません」

 譲ってもらい、ゴミ袋を入れる。特有の臭いを嗅がないようにしながら扉を閉め、鍵をかけた。

 振り返るともう塩川さんはいなくなっている。

 そういえば、シーユーと過ごすようになってから、ゴミの量が増えた。当然のことだけど、大家さんや他の住人にバレたら少しばかりまずい。

 二人になって生活が大きく変わったのかというと、別にそうではない。もともとシーユーはわがままを言わない性格だし、大抵のものは二人共用だ。食材なんかは、むしろ二人いた方がうまく消費できたりするので、エンゲル係数もそれほど高くなっていない。

 お金を使うようになったのは服屋さんとドラッグストアくらい。思わぬところから共同生活がばれないようにはしていきたいので、ゴミは気を付けるようにしよう。

 ……そういえば、あまり外食に連れて行くこともなかった。私自身行く気がない。一人暮らしも一年すると、簡単な料理で満足するものだった。シーユーは気を使ってか要望をあまり言わないけど、今度いろいろ聞いてみるべきかもしれない。

 二人で過ごすようになって二か月。まだ慣れないのだ。



 コンビニで飲み物を買い、部屋に戻った途端、違和感を覚える。

 ノックの返事がない。けっこう時間が経っているのに、シーユーはまだお風呂なのか。

「……おーい」

 部屋は暗いまま。お風呂場は電気がついておらず、タオルは湿っている。トイレにもいない。

 嫌な予感がして、玄関に急いだ。

 すぐ気付くべきだったのだ。シーユーの靴がない。


     ◇二月 3


「名前、なんて言うの」

 私がそう訊くと、彼女が一瞬黙った。母親の話に続き、二度目の沈黙。

 部屋がやっと暖かくなり、ローテーブルを挟んで私と彼女は座っていた。彼女はスラックスを着て丸まり、炬燵に手を入れている。

 壁には彼女の着ていた服をかけた。目立つ黄色のコートとジーンズ。雪にまみれていて、払うのに苦労した。薄手のシャツなどは洗濯機に入れた。しかしあの服装では寒くて仕方がなかっただろう。一体どうしてこんな恰好でいたのか。

 ココアのお代わりが三杯目になった時、私の質問には黙ったまま、彼女が話し始める。

「……お願いがあります」

「なに?」

「わたしを、ここに置いてください」

「へ」

 突然の申し出に私はまごつく。髪をかきあげたその一瞬だけ、彼女に幼い面影が消えた。

「行くところがなくて。ちょうどここを見つけたけど開かなくて。だけどここは、お母さんとの大切な場所で、いちゃいけないとは思ってるのに、でも、でも」

 一瞬部屋に、一切の音が消えてから。

「わたしは、生きなきゃいけないんです」

 彼女は言い切った。



 最初に思ったのは、私は責任を取れない、ということだった。

 まず伝えたのもそういうことである。彼女を匿うのはいいとして、そこには様々な問題がある。誰かにばれたらとか、彼女もしくは私にトラブルが起こってもお互いが対応できないだろうとか。

 そのうちどんどん頭の中に問題が浮かび上がってくる。食事はどうするのか、外出はどうするのか、お金は、学校は。

 彼女はそれら全てに回答するように言う。

「めいわくはかけません。外にはあまりでれないけど、できることはなんでもして、言われたことはなんでも聞きます」

 そしてうわごとのように付け加える。

「洗濯のお手伝いします。贅沢なんていいません。片付けもすぐやります。外で寝ます」

「ちょ、ちょっとやめて……!」

 なんだか私が彼女を脅しているような流れになっている気すらして、言葉を遮る。別にそこまで求めているわけではない。

 幼げな顔、そしてドアに向かうさっきの悲しげな顔を思い出し、私は結局、彼女を放っておけないことを痛感したのだった。



 彼女のことを、なんと呼べばいいのだろう。

「わたし、シーユーっていいます」

 そういって彼女、シーユーは左腕をこちらに差し出す。手のひらを見せるように突き出し、右の人差し指で手首を指差す。

 白い手首に浮かび上がる血管を避けるような、二つの傷。

 鋭利な刃物が刺さったかのようにくっきりと赤黒く残ったその傷跡は、細い月のように湾曲している。当然今は血が出ていないけど、少し爪で引っかいただけでまずいことになりそうだ。

「こっちがC、そしてこっちがU」

 そう言われると、カーブが少し足りないもののアルファベット二文字に見えなくもない。

 シーと、ユー。

 痛々しい左手首を笑顔で見せ付ける彼女は、やっぱり幼く見えた。


     ◇四月 4


 外へ出てすぐ、探す手がかりが何もないことに気がついた。

 改めてシーユーの特異性を実感する。

 名前も知らない、出身も知らない、家族も知らない。行き先なんて把握のしようもなかった。

 とりあえず玄関から建物の中に戻り、階段を使って各階を見回る。

 真っ先に思い浮かぶのは、先ほど出会った初老の男性のことだ。家出少女を探す怪しい人。考えたくもないことを強制的に想像させる。

 五階の廊下まで見て私は膝に手を付き、息を整える。いつも通り、誰もいない。

「そうだ、よね」

 分かっていたのだ。シーユーが外に出たがらない訳を。

 二月に出会ってから私はそのことを考えないようにしていた。シーユーに母親のことを聞かないのと同じこと。

 それらが今はね返ってきただけにすぎない。

 彼女には多くの事情があるのだ。私が知らないものがたくさん。

 そしてその事情に私は触れずにきた。だから今追いかけたって、追いつけるわけがない。

 目を瞑る。

 思い浮かんだのは、初めて会った時。悲しそうな顔で扉を叩く彼女。

 彼女は今どこにいるのだろう。またあの表情で、どこかに歩いて行ってしまうのだろうか。

 ――わたし、シーユーっていいます。

 彼女はさよならばかり言う。私はまだ、それを伝える気はない。

 私は目を開けて、階段を駆け下りる。



 どこから探そうか。

 あの男性を見つけるのも方法の一つとしてあるかもしれないけど、連絡先を聞いていない。関わらないようにしたのが仇となった。

 そういえば。

 シーユーも、あの男性を見たんじゃないだろうか。彼女はいつも窓際の段差に座っている。窓から見下ろせばアパート近くを歩く人のほとんどを観察することができるだろう。

 ついでに、嫌な想像までしてしまう。彼女はそうやって外敵を見張るために、いつも窓際にいたんじゃないだろうか。外に出たがらない時は、誰かがマンションの外にいたのかもしれない。

 さすがにそれは邪推か。頭を振って、私はアパートをまわる。

 それに、私は好きなのだ。私が学校に出かけるとき、シーユーが窓から手を振ってくれる。大抵いつも、あの窓から

 足を止めた。壁に並ぶ窓、その一カ所に、黄色の何かが見える。

 シーユーの上着の色に似ていた。それにあの窓は、私の部屋じゃない。


     ◇述懐 2


 このアパートはとてもいい。やっと誰も来ない場所を、アタシは手に入れたのだ。

 この部屋を気に入ったのは、大きな窓と、その手前にある段差を見た瞬間だった。

 まるで作業台のように、腰の高さに作られた段。

 これはいい。

 テーブルのように使えるし、座ったまま景色を毎日眺められる。端には植物を飾り、お気に入りの目覚まし時計や鉛筆立てを置こう。せっかくの一人暮らしだ、自分だけの城を作りたい。そんな風に思い、このアパートに即決したのだった。

 そこから一年。窓の前の段差は、本やら生活用品やらによって埋まった。冬対策にこたつを買ったのが決定的で、テーブルとしての価値は皆無。結局それから段差の上の物は片付けたけれど、別の使い道は思いつかない。最近では、窓を開けたりカーテンを操作したりするために手を伸ばす必要があり、手前の段差が邪魔にすら感じるようになった。だいたいそんなものだ。

 そして、今。片付いた段差の上には、拾ってきた女の子が寝転んでいる。



 黄色いコートの女の子。今は目を瞑っている。普通に呼吸しているし、ただ眠っているんだろう。

 ゴミ捨てを終え戻ってきたらこの子が廊下で倒れていたので驚いたが、特に事情を詮索する気はない。

 この子は使える。安寧な生活のために。

 アタシが見下ろしていると、女の子は眠ったまま唇を軽く動かす。そろそろ起きるね。どうやって大人しくさせておこうか。

 トトン、トン。

 トトン、トン。

 ノックの音。まったく、いったいどうしたことだ。大家だって訪れたことがないのに。

 居留守を使おうと思ったところで、女の子がかすかに声を上げる。

「……エリーだ。エリーが来る。起きないと……」

 目は開けず、体も動かない。寝言か。

 トトン、トン。

 小気味よいノックが続く。

 エリー。えりー。

 ふうん。

 あまり騒がないでほしいな。そういうことなら、扉を開けない訳にはいかないね。


     ◇四月 5


 開けてくれた塩川さんの表情はいくらかこわばって見える。とはいえ私も、同じような顔をしているだろう。

 塩川さんの部屋にはそれほど大きなものがなく、台所から部屋まで見通せる。

 窓の手前、私の部屋にあるのと同じ段差。そこで少女が横になっていた。

 黄色いコートに身を包んだ、シーユー。

 もう少し近づいて様子を見たかったけれど、塩川さんはそれを遮るように廊下に立つ。

「あの子、絵里ちゃん家の?」

「……」

「どうやってここにいるのが分かったの」

「見上げたら、窓の奥に黄色いコートが見えたので」

 塩川さんは苦笑する。

「まいったね。この間片付けてしまったアタシ自身が悪かったってことかな。でも、あそこくらいしか寝せるところがないんだよ。逃げられたら困るし」

 逃げる? まるでさらったような物言いだ。

 髪をかきあげ、余裕な表情の塩川さん。

「あの子、友達かなにか?」

「はい」

「嘘だね。あの子が遊びに来たんなら、もう少しなにか持ち物があるはずさ。ほとんど何も持ってないってーのは、このアパートの住人と考えるのが自然じゃないかね。例えば、絵里ちゃんのところに住み込んでいるとか」

 一通りばれている。持ち物検査されたらしい。

 警戒を怠るわけにはいかない。曲がりなりにもシーユーをさらった人なのだ。

 私の緊張が伝わったのか、塩川さんは話し出す。

「あの子はアタシが利用させてもらうさ。ちょうどいい存在だからね」

「利用?」

「そう。……最近ここらをうろつく男は知っているかい? 家出少女を捜しているってやつ。実はあれ、アタシのことを追ってるのさ。姿もばれてないのにここまで来るとは思わなかったがね。ま、家出少女の目撃情報くらいしか持ってはいないだろうさ」

 うろつく男。今日の午前に話しかけられた初老の男性のことか。確かに家出少女の聞き込みをしていた。あれはシーユーのことではなかったのか。

 それに、塩川さんが家出少女というのも知らなかった。どうにかしてこのアパートに潜り込んだのだろうか。確かに大家さんはおおざっぱではあるけど。

「このままだとこの生活が終わってしまう。だから代わりにこの子でも差し出そうかと思ってね。ここらに出没する家出少女がこの子だって情報を知れば、アタシはここにいないってことになって、あの男は別のところを探すようになるだろ?」

 それはそうかもしれない。シーユーだってまっさらな過去を持っているわけではない。

 だけど。

「あの子は家出少女なんかじゃありません」

 あの男性に連れて行かれたらそのまま警察に、なんてこともありうるのだ。それは困る。

 私の頭の中で、ドアに縋りつくシーユーの顔が再び浮かび上がった。あの子の家は、あの家だ。

 手を握り、私は一歩前に出る。

「取引、しませんか」

「……へえ?」

「シーユーを帰してくれれば、私はあの男性に何も言いません。例えば『あの部屋に家出少女が隠れてる』とか」

 一瞬止まってから大笑いされた。

「絵里ちゃん。それは取引じゃなくて脅しっていうんだ。アタシにメリットがないし、応じる義務もない。アタシとしてはこの子を引き渡せばいいだけなんだからね」

「もしシーユーを無事に返してくれるなら、私があの男性に嘘の情報を流します。『家出少女を遠くの方で見かけた』というような。そうすればあの男性はうろつかなくなって、塩川さんも私たちも助かります。これならメリットがあるでしょう」

 塩川さんの笑いが止まり、腕を組むのが見えた。私は畳み掛ける。

「塩川さんの所在、あの子の所在、お互いがお互いの情報を黙っているだけで、この生活は保たれるんです。無理にそれを崩す必要はないと思いますが」

 手の震えを力で止める。弱気に見られるわけにはいかない。

 やがて塩川さんは唇を曲げる。

「……なるほどね。お互いに武器を持っているわけか。確かにどちらかが動けばどちらも損をする。分かったよ。連れていきな、あの子」

 ため息をつきそうになるけど、なんとか打ち消す。こんな交渉したことない。うまくいくとは思わなかった。

 体型のわりに軽いシーユーを持ち上げ部屋を出ようとする私に、塩川さんが声をかけてくる。

「……別にさ、揉め事を起こそうってわけじゃないんだ。これからもこの生活でいければいいと思ってる。絵里ちゃんもそうだろう?」

「はい」

「いい返事だ。その子と仲良くね。寝てる時も絵里ちゃんの名前を呼んでいたんだから」

 本当のことか分からなくて、私は黙ったまま、塩川さんの部屋を後にする。



 シーユーが目を覚ましたのは午後九時のことだった。

「……エリーの夢を見た」

 ベッドの上で呟く彼女。私は横に座り、訊き返す。

「夢?」

「うん。いつものノックの音で帰ってきて、お菓子買って来てくれた」

「……お菓子はないけどね」

 夢見心地のシーユーにもノックは聞こえていたのだろうか。

 やがて状況を思い出したのか、彼女は顔だけこちらを向き、謝りだす。

「ごめんなさい。男の人の話をされてから怖くって。お風呂あがってからコート着て外の様子を見に行こうと思って、そしたらふらって倒れちゃって。エリーに迷惑はかけないって言ったのに」

「だいじょうぶだよ。もう」

「ほんと……? シーユー、ここにいていい?」

「うん」

 居ていいのだ。彼女が前ここに住んでいたとか、現在隠れる必要があるとか、そんなことは関係ない。私が「居てもいい」と思うのだから。

 別ればかりが未来に立ちはだかっているとしても、出会いを悲しむ必要はない。

 私は上着を脱いで、シーユーの横にもぐりこむ。

「今日は一緒に寝よ」

「ええ! いいよ、シーユーは窓のところでねるから」

「駄目。倒れたのだって多分、お風呂から出た立ちくらみが原因でしょ。病人みたいなものなんだからしっかりしたところで寝て」

 母親口調になってしまうのも、目が離せないせいだ。いつかいなくなってしまう、その時を意識しているからこそ、今だけは「ここに居ていい」ということを知ってほしい。

 それだけ私は、まださよならを言いたくないのだ。




目次

第一話 すぐに See you, soon.

第二話 あとで See you, later.

第三話 またね See you, again.


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